十三才の少女が見た予知夢

〔薄暗い山寺の庭に立っている、しばらくすると母親によく似た人が空中に浮いている。懸命に確かめようとするが本当に母親かどうかわからない。次の瞬間、寺の片隅から鐘の音がいかにも悲しそうに1回だけ聞こえてきた。〕

この夢は13才の少女が見た夢です。実は彼女は、この寂しく恐ろしい夢を見た後に隣町の病院に入院している母親のことが心配になつて急いで駆けつけてみました。母親はまだ生命があったのですが、担当医は危篤状態だと説明してくれました。二日後の朝、手術の結果が思わしくなく、ついに母親は死んでしまつたのです。

この夢は予知夢であり、夢で見たことが夢で終わってしまわないで、そのまま現実になってしまつたケースです。

その後、この少女は夕方、寺の鐘の音が聞こえるたびに、母の死に出会ったときの不安と恐怖がよみがえるようになつてしまいました。それから何年かは除夜の鐘を聞いても不安な気持ちに襲われ続けました。この悪夢ともとれる予知夢のために、少女は鐘の音を聞くと無意識のうちに不安になつてしまうように条件づけられてしまつたのです。

夢でも現実でも、激しい不安を経験すると、なかなかその感情は解消しないものです。このように夢にこだわる気持ちを打ち消すためには、意識的にそのことを忘れるように心がけて、そうすることによって多少時間がかかつても、いずれは不安の感情は消え去ってしまうでしょう。

滝沢清人著「夢分析」より

 

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