昭和21年12月末の朝、青森県東津軽郡三厩村龍飛崎の“ウタル間の先”と呼ばれる磯で海苔採取をしていた28才の宮下りつさんは突然の波にさらわれて水没しました。一緒に海苔採取をしていた18才の三浦たけさんが、助けようとしたのですがかえって自分までもが波にさらわれて冲に流されてしまいました。近くでこれを見ていた粕谷ぬえさんは急いでこのことを村人に知らせました。ただちに捜索船が出されて一帯を捜索し宮下りつさんの遺体だけは引き揚げましたが、三浦たけさんの遺体はどうしても見つかりませんでした。
その夜事故を目撃していた粕谷ぬえさんの夫の妹の粕谷ていさんが夢を見ました。夢にでてきたのは遺体の見つからない三浦たけさんで、粕谷ていさんの家の窓から這い上がり海苔取りの手篭をぶら下げた姿で「村人に知らせてくれてありがとう」とお礼をいいました。しかし村人に知らせたのはていさんではなく義理の姉のぬえさんでしたから、ていさんはたけさんの言っていることがわかりませんでした。それで「何のことだ」とたずねると、亡霊は「これでもわからないか」といって顔を上げました、見ると片目が抜けてありませんでした。あまりの不気味さに夢から覚めたていさんは家人に夢の一部始終を語ったところ「それは三浦たけは、おまえとぬえを取り違えて礼に来たのだ」といって大騒ぎになりました。
そして、その翌日今度は海老名某という老人の夢枕に三浦たけさんが現れました、「3日後には汐が変わり、私の体は冲に流されてしまう、その前に早く引き上げてくれ場所は龍飛崎のしかじかだ…」と告げて消えました。海老名老人さつそく村人にこのことを告げ知らせました、そしてたけさんに言われた場所に船を出すとやはり遺体が発見されました。しかも魚にでもつつかれたのか、粕谷ていさんの片目だけはえぐられたように無くなっていました。お二人のご冥福を祈ります。
(夢にまつわる不思議な話し。不二龍彦著より)
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