お昼休み。
最近は二人っきりになる為に、昼は中庭で取るようになった。

「ねぇ、クッキー焼いてきたんだけど、食べる?」

お弁当を食べ終えた後、祐巳が鞄から小さな包みを取り出した。

「それとも、もうお腹一杯かな?」
「ううん。折角祐巳が作ってくれたんだから、食べるよ、勿論」

乃梨子は躊躇いも無くそう言った。
すると、祐巳は嬉しそうに包みからクッキーを取り出すと、

「はい、あーん」

とクッキーを差し出した。

「え?」

差し出されたクッキーを前に固まる乃梨子。

「あの、祐巳?」
「ほら、あーん」

眼前に差し出されたクッキーと、祐巳の無邪気な笑顔。
乃梨子の顔は見る見る赤くなっていく。

「あ、あの、それはちょっと恥ずかしいんだけど……」
「え〜、じゃあ――」

祐巳は持っていたクッキーの端を銜える、それをそのまま差し出してきた。

「んっ」
「なっ?」

これは所謂、恋人限定で行うことの出来る、端と端とで食べていくというもの。
しかし、それは長い棒状のお菓子でやるからこそ可能なもので、クッキーなんて物でやれば、その瞬間唇と唇が触れてしまうだろう。

「ち、ちょっと、祐巳?」
「んんっ」

乃梨子のことはお構い無しに、祐巳は目を閉じて乃梨子を待っている。
これでクッキーが無かったら、まるでキスをねだっているようだ。

「くっ……」

乃梨子は悩んだが、ここでやらなければきっと祐巳は落ち込むだろう。
「私が作ったクッキーは食べたくないんだ」とかなんと言うに決まってる。
それならば――、

「ん……」

乃梨子はクッキーを真ん中で割って口に含み、もう半分を祐巳の口に押し込んだ。
祐巳は数回咀嚼した後、それを飲み込んだ。

「へへ、何か、いつもより美味しいね」
「味なんて分かんないよ。恥ずかしくて……」
「あ、酷い。折角乃梨子ちゃんの為に作ったのに」
「しょうがないでしょ。今だって、恥ずかしくて顔から火が出そうなんだから」
「もう、照れ屋なんだから」

祐巳はプウッと頬を膨らませた。
それを見て、乃梨子は、

(祐巳に照れが無さすぎなのよ)

と心底思った。

「ま、いっか」

祐巳がそう言ったかと思うと、次の瞬間、、乃梨子は祐巳の腕の中にいた。

「乃梨子ちゃんは可愛いから、許してあげる」
「な、ちょっと、祐巳?」

驚き、慌てて祐巳の腕の中で抵抗するが、祐巳の腕は乃梨子をがっちり掴んで離さない。

「もう、暴れないでよ。ちょっとだけだから」

そう言うと、祐巳は益々乃梨子をギュッと抱きしめて、乃梨子の肩に顔を埋めた。
乃梨子は、やれやれと体を祐巳に預けた。
まったく、どうしてこんな人を好きになってしまったのか。
自問自答してみるが、それらしい答えは出ない。
ただ、何時の間にか惹かれていたのだ。
そして、今こうして、この人と一緒にいる時間が、たまらなく心地良い。

「ねぇ、乃梨子ちゃん?」
「何?」
「クッキー、もう一つ食べる?」
「家でゆっくり食べる」
「む〜、面白くないなぁ」
(やっぱり、何処を好きになったんだろうなぁ……)

昼休みの終わりを告げるチャイムを聞きながら、乃梨子は心の中で溜め息を吐くのだった。

 

 

―――――――――――――――

あとがき

昨日(日付変わってるからもう一昨日か)やっとリクエスト作品をUP出来たので、勢いでもう一本書いてみました。
ラブラブ〜なのを書きたいと思いまして。
30分しか掛かってないので、凄く短いですけど……。

さて、今回のお話は如何でしたでしょうか?
少しでも楽しんで頂けたら幸いです。
では、ここまで読んで下さりありがとうございました。
またの機会があることをお祈り申し上げます。


20061011 御神楽 華音


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