その学校は、酷くつまらなかった。
大仏展を観に行ったため、私は時代錯誤も甚だしい、このリリアン女学園に来るはめになった。
もっともそれは自業自得だが、大仏展に行ったことも後悔はしていない。
しかし、ここに通う少女たちとは、どうも馬が合わない。
そもそも、「ごきげんよう」だなんて私のキャラじゃない。
今は一体西暦何年だと思っているのか。
マリア像に手を合わせることだって、面倒くさいことこの上ない。
それは、わたしがマリア像に対して、何の感情も持っていないからだろう。
この学園がこんなにも息が詰まるのは、全てこのマリア像の所為なのではないか。
そう思ったら、途端にマリア像が憎たらしく見えてきた。
私は、指を立て、銃を形どると、
「バンッ」
撃った。なんとなく気分がいい。そんなことを思っていると。
「あなた、一年生?」
そう、後ろから声がした。
私はその声にビクッと体を震わせた。
もっと周りに注意するべきだった。
そう思ったが、今となっては後の祭りだ。
私は、恐る恐る、後ろを振り返った。
そして、そこには……
本物の、マリア様がいた。
「シスターに見つかったら大変だよ?」
その人は、可笑しそうにクスクスと笑っていた。
けして、美人というわけではない。けれど、私はその人の笑顔から目が離せなかった。
「取り合えず、今回は黙っていてあげるけど、これからは気をつけてね」
「は、はい……」
私が頷くと、その人は満足そうに微笑んで、
「それじゃあ、ごきげんよう」
と踵を返した。
その人の背中が遠ざかって行くのを見て、何故か、このまま別れてしまうのが嫌になった。
「あ、あのっ」
無意識に、私は叫んでいた。
「私、二条乃梨子っていいます。また…また会えますか?」
その人は突然のことに、初めはキョトンとしていたが、やがて、にっこり微笑むと、
「私は、福沢祐巳。同じ学校なんだから、いつだって会えるよ」
その人は、そう頷いてくれた。
「福沢…祐巳、さん……」
私は、その名前をかみ締める様に呟いた。
祐巳さんの笑顔が、今も目に焼き付いていた。
なんとなく、この学校に通うのもいいかな、と思えるような……
そんな出会いだった……。