ある暑い日。
私は休み時間にジュースを買いに行った。

パックジュースを購入して、それを飲みながら教室に戻る。
本当はジュースの飲み歩きは禁止だが、先生に見つからなければ多分問題は無い。

「あ〜、乃梨子ちゃん、いい物飲んでる〜」

不意に、後ろから気の抜けたような声と共に、何かが私に覆い被さってきた。
その瞬間、私の心臓は一気にはね上がる。

「ゆ、祐巳さまっ!」

首だけを動かし、後ろを見ると、案の定、祐巳さまが私に負ぶさっていた。
体育の帰りなのか、服装は体操服である。
祐巳さまの髪の匂いと一緒に、汗の匂いがした。
それに、服装が体操服の所為もあり、背中から祐巳さまの柔らかな胸の弾力が…って、オヤジか私はっ!

「聞いてよ、乃梨子ちゃん。この暑い中、マラソンだったんだよ、今日の体育」

そんな私の心境を知ってか知らずか、祐巳さまは暢気に体育の愚痴をこぼす。

「もう暑くて死にそうだよ。そ〜ゆ〜訳で、ジュース一口頂戴」

言うが早いか、祐巳さまは私の持っているパックジュースを、私の手ごと口元へ持っていき、ストローを口に含んだ。

「ふぅ、ありがとう、乃梨子ちゃん。生き返ったよ」

一口と言っていたわりには、結構軽くなった気がする……。
それに何より、これは所謂、その……

「ん、どうしたの、乃梨子ちゃん?顔赤いよ?」

対する祐巳さまは、不思議そうに私の顔を覗き込んだ。

「い、いえ、その…これって、あの…か、カカ……」
「か?カトリーヌ?」
「何でですか?ですから、その、間接キス、じゃないのかなぁ、と……」
「え?」

きっと真っ赤な顔をしているであろう私に対して、祐巳さまはキョトンと私を見つめた後、

「あははははははっ」

笑った……。

「ど、どうして笑うんですか?」
「あははははっ、ご、ごめんごめん」

祐巳さまはそう言って、目元の涙を拭った。
って、笑いすぎっ!

「乃梨子ちゃんって、本当に可愛いね」

祐巳さまはそう私をギュッと抱きしめた。
それだけで私の心臓は例の如く高鳴ったが、なんとか踏み止まった。
私は祐巳さまの体をグイッと引き剥がした。

「もう、祐巳さま。茶化さないで下さい」

これで誤魔化されたりするもんか。

「ごめん、乃梨子ちゃんがあまりにも可愛いこと言うから」
「もう、祐巳さまっ?」
「あ〜、怒んないでよ。からかってるわけじゃなくて、ただ、純粋で可愛いなって思ったの」
「そ、そんなこと……」

まったく、ズルイと思う。
そんなに真っ直ぐに見つめられて、「可愛い」なんて言われたら、もう怒れない……。

「間接キス、ね」

祐巳さまは、そう呟くと辺りを見渡し、誰もいないことを確認すると……

「ん……」

祐巳さまは私の唇にキスをした。

「唇にキスできる仲なのに、間接キスであんなに真っ赤になっちゃって、本当に可愛いよね」

そう言って、祐巳さまは可笑しそうに笑った。
一方、私は頭が真っ白になってしまっていた。

「私、着替えなくちゃいけないから、もう行くね。それじゃあ、乃梨子ちゃん、ご馳走様」

去っていく祐巳さまの背中を見送りながら、きっと祐巳さまには一生勝てない。
そう思った……。

 

 

――――――――――――――――――

あとがき

こんにちは、御神楽 華音です。
祐巳と乃梨子をイチャつかせたい。
そう思って出来たのがこれです。
如何でしたでしょうか?

今回は割りと短めになっております。
なので結構ササ〜と書けました。
乃梨子がからかわれるのを書くのが楽しい……。

さて、ここまで読んで頂き、ありがとうございました。
楽しんで頂けたのなら、それに優る幸せはありません。
では、またの機会がありますことをお祈り申し上げます。


20060404 御神楽 華音

 

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