11月19日。
今年、この日が休日で良かったと、心から思う。
その日は、祐巳と付き合い始めて、丁度一年。
授業が無いので、一日中祐巳と一緒にいられる。

「デートしようか」

と言ってくれた祐巳の誘いを断って、変わりに家に呼んだ。
そうすれば、ずっと二人っきりでいられるからだ。

ピンポーン

まだまだかと部屋でソワソワしていると、漸くチャイムが鳴った。
乃梨子は、勢いよく、玄関に飛んでいった。

「おはよう、乃梨子ちゃん」

ドアを開けると、祐巳の笑顔。

「いらっしゃい、祐巳っ」

学校ではないので、普通に受け答えする。

「ねぇ、早く上がって」

乃梨子は祐巳の手を取って、そう急かした。
まだ靴も脱いでない祐巳は、そのまま上がってしまいそうになりつんのめる。

「ちょっと、乃梨子ちゃんっ。まだ靴脱いでないよ」
「そんなの後でいいですよ」
「いや、よくないでしょっ!」

祐巳は、片手を乃梨子に握られたまま、なんとか靴を脱いだ。

「祐巳。飲み物、ジュースでいい?」
「うん、なんでもいいよ」

乃梨子は、グラスに氷とジュースを注ぐと、それにストローを挿してお盆に載せる。
それから、戸棚からポテチを出して、袋の端を銜える。
その後にお盆を持って、準備完了(乃梨子にとって)

「いこ〜」

そのまま部屋に移動しようとしたが、呆れた顔をした祐巳にポテチを取られた。

「行儀悪いよ、乃梨子ちゃん」
「はーい」

 

二人は場所を乃梨子の部屋に移すと、お菓子とジュースを飲みながら、雑談に花を咲かせた。
毎日一緒にいるけれど、話は尽きることがない。
出来ることなら、片時も離れることなく、傍にいたい。
そんなことすら思う……。

「そういえば、弟の祐麒がホームページ作ってるんだけど、今日で一周年なんだって。
何かこの一週間くらい、それで浮かれてたんだよね」
「そうなんだ。私達と一緒だね」
「飽きっぽいのに、よく続いたなぁ、と思うよ。これも自分の作品なんかを読んでくれる人たちのお陰だ〜とか、
私にはよく分からないことを語ってたよ。尤も、更新スピードは亀並みで、しかも波があるらしいけどね」

ホントすんません……。

「祐巳はホームページ作らないの?」
「え、何について?」
「私と祐巳のラブラブな日常について、とか」
「嫌だよ、恥ずかしい。それに、それなら乃梨子ちゃんが作ればいいじゃない」
「え〜。祐巳に作ったのを見るのが楽しいんじゃない」
「乃梨子ちゃんだけね」

こうして、とりとめのないことを話して過ごすことが、何よりの幸せ。
祐巳が3年生になって、卒業が近づくにつれ、益々そう思うようになった。

「あ、そうだ」

ポテチが空になり、ジュースも飲みつくして、乃梨子はさも今思いついたように声を上げた。

「祐巳、ここ座って」

ベットに腰掛けて、少し足を開く。
そして、ポンポンとその間を示した。

「どうしたの、急に?」
「いつも私がしてもらってるから、今日は私が祐巳を抱っこしてあげる」

それは、前から考えていたこと。
いつも抱きしめてくれる祐巳を、自分も抱きしめてあげたいと思っていた。

「そう。じゃあ、甘えちゃおうかな」

そう言って、祐巳が乃梨子の足の間に座る。
すると、乃梨子は祐巳の首に手を回して、ギュッと抱きしめた。

「へへ、つかまえた」
「もう、甘えん坊だね」

そう言っても、やはり嬉しそうに、祐巳も乃梨子の手に、自分のそれを添えた。

「祐巳にだけだよ、甘えるのは」
「うん。そうして」

祐巳の卒業まで、あと数ヶ月。
祐巳の志望校は、実家から通える所ばかり。
会おうと思えば、いつだって会える。
けれど、リリアンから祐巳がいなくなるという事実が、乃梨子の心に、ぽっかりと穴を開けてしまいそうだった。
しかし、だからといって、祐巳に甘えてばかりいられない。
ただ甘えているだけでは、自分は何の為に祐巳の傍にいるのか分からない。

「ねぇ、祐巳。私達、今日で付き合って一年だけど、これからも一緒にいようね」
「うん、勿論だよ」
「私、祐巳に甘えてばっかりだけど、私も祐巳を支えていけるようになるから」
「充分、支えてもらってるよ。乃梨子ちゃんが傍にいてくれるから、私は頑張れるんだよ」
「それだと、一緒にいるだけで、祐巳の力になれてないじゃない」
「そんなことないよ」
「ある。私が、そんなの嫌だもん……」
「乃梨子ちゃん……」

祐巳は、乃梨子に抱きしめられているその体を、そっと乃梨子にもたれさせた。

「もし、私が倒れそうになったら、乃梨子ちゃんは、こんなふうに私を支えてくれるでしょ?
いざとなったら、助けてくれる人がいるから、私は無茶もできる。乃梨子ちゃんがいるから、私は頑張れる」

祐巳にそう言われた乃梨子は、やれやれと溜め息をついた。

「ズルイよ、祐巳は。そんなこと言われたら……」

とほんのり頬を染めて、

「嬉しいじゃない……」

と言った。
そして、祐巳の肩に顔を埋めた。

「うん。私、祐巳を支えられるようになるから。だから、祐巳も、もっと私に甘えてくれていいからね」
「うん、ありがとう。乃梨子ちゃんも、私に甘えてくれていいからね」
「それは勿論。祐巳に甘えるの好きだし」
「そうだね」

と二人はお互いに笑った。

一年という節目を迎えようと、それは終わりではない。
それは、新たな始まり。
二人で歩んでいく道は、これからもずっと、続いているのだから――

 

 

 

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あとがき

私がこのサイトを立ち上げてから、早一年が過ぎました。
今回の話は、一周年の記念として、このサイトを訪れて下さった方々へ捧げたいと思います。
途中、祐巳が祐麒の話をしていましたが、まぁ、お察しの通り、あれは私のことです。
短期間で更新することもあれば、ずっと更新しない時もある。
それでも、今日という日を迎えることが出来たのは、みなさんのおかげです。
本当にありがとうございます。
これからも頑張っていこうと思いますので、思い出した頃に、ふらっと立ち寄って頂ければ幸いです。

さて、今回の話は如何でしたでしょうか?
楽しんで頂けましたでしょうか?
楽しんで頂けましたら幸いです。
それでは、またの機会がありますように。

ありがとうございました。

 

20061119 御神楽 華音

 

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