「リリアン女学園ハッピートーク『好きな人に言われてみたい言葉』はい、拍手〜」

薔薇の館に由乃一人の拍手が空しく響く。

「ねぇ、由乃さん。これから何が始めるの。蓉子さま達まで呼んで」

祐巳の言葉通り、薔薇の館には、祐巳、由乃、志摩子、祥子、令、瞳子、乃梨子、可南子の在学生に加えて、蓉子、聖、江利子の3人の姿があった。

「祐巳さん、さっき言ったでしょ。『好きな人に言われてみたい言葉』を言っていけばいいのよ」
「え、なんの為に?」
「面白いからよ」
「無茶苦茶だね……」

「面白いから」なんて、単純にも程があるが、何故だか祐巳は反論出来なかった。

「じゃあ祐巳さんからいきましょうか」
「え、こういうのは言い出しっぺからじゃないの?」
「いいわよ。じゃあ、私から時計回りで、祐巳さんはトリね」
「えぇっ。それもちょっとっ!!」

ヘタな反論なんてするものじゃない。
祐巳はそう悟った。

「つべこべ言わない。じゃあ、早速私からね。私は『一緒のお墓に入りましょう』ね」
「えぇっ。いきなりネタなの?」
「ネタじゃないわよ。プロポーズの王道でしょ?」
「いや、死語のレベルじゃない?」
「え、そうなの? まぁいいわ。次、志摩子さん」

由乃にとって、自分の言ったことが死語だろうがそうでなかろうがどうでもよかった。
重要なのは、他の人がどう答えるか、だ。
重要といっても、ただ自分が楽しみたいだけなのだが。

「私? そうね。好きな人に言われてみたい言葉……。『一緒にいるとホッとするよ』かしら?」
「うわっ、真面目に答えちゃうの?」

予想外の姉の言葉に、乃梨子が声を上げる。

「あら、何か間違ったかしら?」
「いやいや、全然オーケーよ。じゃ、次乃梨子ちゃんね」
「はぁ、そうですね。『次はどの仏像見に行こうか』ですかね」

その場にいた全員が呆れ返る。

「乃梨子ちゃん。折角志摩子さんがいい流れを作ったのに、なんでそれを壊すかな?」
「ネタで始めた由乃さまに言われたくありませんよ。そもそも私は真面目に答えました」
「好きな人と一緒に仏像観賞をするのが、乃梨子のささやかな夢なのよね」
「いや、そうだけど、ささやかって言わないで。なんか悲しくなるから」

志摩子がフォローを入れてくれたのは嬉しいが、微妙にフォローになれてないのが悲しかった。

「しかも、次はってことは、もう一度は一緒に見に行ってるってことですわね」

と瞳子が茶々を入れる。

「さぁ、そう言う瞳子ちゃんはどうなのかな?」
「そうですわね。『僕には君しかいないんだ』と瞳子だけを見てくれる方がいいですわね」
「あら、意外に乙女な回答ね」
「失礼ですわね。瞳子は正真正銘の乙女ですわ」
「ふむ。じゃあ、次は可南子ちゃん」
「不潔です」

始まってからずっと一言も喋らなかった可南子が、初めて口を開いた。
男嫌いの可南子は、この企画自体が不満のようだった。

「いや、でも将来的にこんな人が現れたらいいな、とか……」
「男なんてみんな死ねばいいんですよ」

取り付く島もなかった。

「はい、じゃあ可南子ちゃんは保留として、次は江利子さまです」
「そうね。やっぱりストレートに『愛してます。結婚して下さい』かしら」
「ぶっ」
「何かしら、聖」
「いや、ただのオナラだよ」

と言いながら顔がひくついている聖。

「何か文句でも?」
「いや、ベタだなぁ、と思って」
「いいじゃない。あの人は一度私のプロポーズを断っているんだから、次は向こうから言わせてやるんだから」
「いやいや、さすがスッポンの江利子だね」
「言ってるのはあなただけよ。で、あなたはどうなの?」
「私? 私は、『ここは僕が払うよ』か『好きなだけ選ぶといいよ』とかかな」
「なにそれ。ただ奢ってもらいたいだけじゃない」
「はは。私は恋愛とかまだ分からないお子さまでいたいんだよ」

聖はそう言って笑ったが、本音は本気で人を好きになりたくないだけなんだと、自分でも気が付いていた。

「じゃあ、次は蓉子さまですね」
「私は、瞳子ちゃんと似てるけど、『世界で一番君が大事だよ』とか言われてみたいわね。やっぱり私のことを一番に考えていてほしいから」
「なるほど。蓉子は独占欲が強いってことね」
「どうしてそう捻くれた解釈しかできないのよ……」

呆れて蓉子はコメカミを押さえた。

「さて、残すところあと3人ね。じゃあ次、令ちゃん」
「え、うん。いや、なんか恥ずかしいな」
「いいからさっさと答えなさいよ、ヘタ令ちゃん」
「う、酷いよ由乃。えっと、『どんなことがあっても、君だけは僕が守るよ』かな」
「はい、次祥子さま」
「あれ、スルー?」

令としては由乃に、

「普段下級生から守ってもらいたいなんて言われてる分、自分も守ってもらいたい願望が強いってことね」

とか、

「ミスターリリアンとか言われながら、実際はかなり女々しいわね」

みたいなツッコミがくることを予想したのだが、由乃自身、令が自分からのツッコミを期待していると分かったので、あえて無視した。
因みに、令のあのコメントは本心からであると補足しておく。

そして、可南子同様、男嫌いの祥子の番になる。
可南子のように、祥子も「くだらない」一笑にふして答えないだろうと、誰もが予想した。
けれど、

「『愛してるよ』と一言でいいから、言ってほしかったわね……」

そうポツリと答えた。
その表情があまりにも寂しげだったので、誰も茶々を入れるのを阻まれた。

「う、ううん」

由乃がひとつ咳払いをして、仕切り直す。
といっても、もう残っているのは祐巳だけなのだが。

「はい、祐巳さん、いよいよラストよ」
「………………………」
「祐巳さん?」

だが、祐巳は答えない。

「ちょっと、祐巳さん。目開けたまま寝てるの?」

ポン、と由乃が肩に手を置くと、

「うひゃいっ」

なんとも面白い声が出た。

「な、何?」
「いや、何って、祐巳さんの番よ?」
「え、もう? もう順番回ってきたの? え、みんな何て答えたの?」

どうやら祐巳は自分の答えを考えるのに必死で、今までの会話が耳に入ってなかったようだ。

「まぁ、みんなの回答は後で教えてあげるから、先に祐巳さん答えなさいよ」

その由乃の言葉に、祐巳は頭を抱える。

「え〜? 好きな人に言われてみたい言葉、でしょ? まず好きな人がいないからとっても難しいよ……。
え〜っと……。あ、でも言葉よりも、そっと抱きしめてくれた方が嬉しいかも、なんて……」
「まぁ、お題とは少し違うような気もするけど、可愛いからよしとするわ」

由乃のその言葉に、ホッと胸を撫で下ろす。

「以上、リリアン女学園ハッピートーク『好きな人に言われてみたい言葉』でした。
他にも、こんなお題でやってくれ、というのがあったら、ドシドシご応募下さいね」
「えぇっ。もう嫌だよ」
「では、また来週〜」

由乃の意味不明な閉めのセリフと、祐巳の情けない声が響く。
薔薇の館は今日も平和である。

 

 

 

おわれ

――――――――――――――――――――

<あとがき>
お久しぶりです。御神楽華音です。
前回のあとがきもお久しぶりから入ったような気がするのは、気がするだけですか?
いや、きっと気のせいではないはずです。
これが今年最初の更新なのですから……。

これは、某ゲームの某ドラマCDのおまけトラック?のハッピートークであったお題です。
祐巳たちは好きな人には何て言ってもらいたいんだろう、と思い、今回は百合要素完全無視で書きました。
CDで声優さんが言ったことと同じのや似てるのが結構あります。

久しぶりだった所為か、最初はなかなか進みませんでした。
後半になると少しノッテきました。
もっとこまめに書け、ということですね。

書き始めの時にはギャグにしようかと思いましたが、なんだか中途半端な物に仕上がった気がします。
ギャグは難しい……。

てか、由乃の思いつきで始まった、ってことになってますが、よく先輩方3人が付き合ってくれたものだと思います。
詰が甘いな……。

由乃が「また来週〜」と言っていますが、来週の更新はきっとありません。
ゆっくりとスローペースでやっていきたいと思います。
長い目で見てやって頂けるとありがたいです。

因みに、「こんなお題で喋らせてくれ」というのがあれば仰って下さい。
更新の約束は出来ませんが、考えてはみます。

では、この話を読んで少しでも楽しんで頂けたのであれば、それは私にとって最上級の幸せで御座います。
また機会がありますことを、お祈り申し上げます。

 

2009.04.21. 御神楽 華音

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