そこは、見慣れた風景。
リリアン女学園の中庭だ。
だがどうして、自分は今ここにいるのか。
瞳子が辺りを見回すと、よく知った人物を見付けた。
福沢祐巳。
先日、瞳子の姉となった、大切な人だ。
「おねえ――」
その祐巳に声を掛けようとしたところで、瞳子は固まった。
祐巳が、誰か自分の知らない女子生徒と向き合っている。
その少女は、恥ずかしそうに俯きながらも、しかし、はっきりとした口調で言った。
「祐巳さまの妹にして下さい」と―――。
「なっ――」
瞳子は言葉を失った。
と同時に、ふつふつと怒りが込み上げてきた。
祐巳の妹は自分だ。
それは、リリアンの生徒なら誰もが知っている筈だ。
それなのに、彼女は祐巳に妹にしてくれと言った。
冗談は止めてほしい。
繰り返すが、祐巳の妹は自分なのだ。
だが、
「うん、いいよ」
祐巳はその少女の申し出を受けた。
「え?」
瞳子は、目の前が真っ暗になったように感じた。
何故?
祐巳さまの妹は、瞳子ではなかったのですか?
そう思ったが、何故か言葉が出てこない。
そうこうしているうちに、祐巳が首からロザリオを外し、その少女の首へ――
「や、やめてーーーーーーーーっっ!!」
気付くと、そこは真っ暗だった。
だが、なんてことはない。
自分の部屋だ。
「ゆめ……?」
そうだ、少し考えれば分かったことだ。
ロザリオは自分が貰ったのだ。
祐巳が持っている筈がない。
「声、出てましたわよね……?」
というか、その自分の声で目が覚めたのだろう。
近所迷惑もいいとこだ。
願わくば、今の自分の叫び声が、誰にも聞かれていませんように……。
「お姉さまの、ばか……」
いくら夢といえど、他の女の子にロザリオをあげるだなんて。
その瞳子の呟きは、静かに部屋の中で四散した――
「いや、だからって、そのことを私に文句言われても……」
と祐巳は苦笑する。
いつものように、薔薇の館でお昼を摂ろうかと思ったら、いきなり瞳子が怒り出したのだ。
聞いてみれば、なんでも夢の中で自分が瞳子以外の子にロザリオを渡したとか。
まったく、そんなことある筈がないのに。
「つまり、あれだ、瞳子はその顔も知らない、ただ夢の中に出てきた人に対して妬いてるわけだ」
「な、そんなことありませんっ」
途端に、顔を真っ赤にして否定する。
「瞳子はただ、瞳子というものがありながら、他の女の子にデレデレするなんて、だらしがないと思っただけですわ」
(デレデレなんてしてないし、そもそも夢の話でしょ?)
そう思ったが、余計に怒らせてしまいそうだったので、言わないでおいた。
代わりに、
「心配しなくても、私は瞳子のことが一番大切だよ?」
そう言って、祐巳は瞳子の鼻先をチョンッとつついた。
「なっ!!」
その瞬間、ボッと顔を赤くする瞳子。
「突然、何を言い出すんですの?」
「いや、別に思ってることを言っただけだけど?」
「〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜」
瞳子は、顔を真っ赤にして俯いてしまった。
「お、今度は照れてるね」
「照れるに決まってますわっ。だいたい、お姉さまはいつもそうやって――」
ふいに、瞳子の口が塞がれる。
驚き目を見開く瞳子だが、自分の口を塞いでいるものは、すぐさま放れてしまった。
「機嫌直してよ。怒ってる顔も好きだけど、やっぱり、瞳子は笑っていた方が可愛いよ?」
そう言われて、顔を見られるのが恥ずかしくなり、瞳子は再び俯いた。
「まだ、機嫌直らない?」
そんな祐巳の言葉に、瞳子はポソッと、
「もう一度、キスして下さるのなら……」
祐巳はクスリと微笑むと、
「甘えんぼ」
二人は、二度目の口づけを交わした―――
―――――――――――――――――
<あとがき>
初挑戦の祐巳×瞳子でした。
咲夜さまからリクエスト頂いたものです。
初挑戦、ということで、やっぱり難しく感じました。
私の中では瞳子はツンデレの代名詞的キャラなので、そのツンデレ具合がちゃんと出せるように頑張ったつもりです。
あと、話の尺が短い分、甘々にしようと努力してみました。
咲夜さま、遅くなりましたが、リクエストありがとうございました。
このような作品ですが、楽しんで頂けたのであれば幸いです。
お時間等ありましたら、またサイトの方へ足を運んで下さると喜びます。
では、ここまで読んで頂きありがとうございました。
またの機会がありますことを、心よりお祈り申し上げます。
20071112 御神楽 華音
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