朝食の片付けをしながら、今日この後の予定を考えていた。
部屋にいてもつまらないし、また公園でも遊びに行こうかと思っていた頃、携帯が鳴った。
見ると、着信は隆之からだった。

「どうした?」
『俊一、今日暇か? 暇だよな? だから、今から行くぞ。じゃあな』

それだけを一方的に言うと、隆之はさっさと電話を切ってしまった。

「あ、おい、隆之?」

俊一は必死に呼びかけるが、電話の向こうからはプープーっと機会的な音がするだけだった。

「おいおい、少しはこっちの話を聞けよ」

俊一はやれやれと携帯を閉じた。
来ると言ったからには、直ぐに梨花と二人で来るだろう。
なので、瑞音と珠奈を公園に連れて行くのは中止にするしかない。
仕方なしに、俊一は二人が来るまでの暇潰しに、マンガでも読もうかと、本棚から一冊コミックを取り出した。
それを読み始めると、興味を持ったのか、珠奈が下から潜り込むと、それを覗いた。

「珠奈には、まだ難しいだろ。今度、図書館で絵本でも借りてきてやるよ」
(買うと高いし……。)

珠奈はマンガに興味を失うと、俊一の膝の上でゴソゴソと動き、服を引っ張ったり、指を絡めたりして遊んだ。
これでは、マンガに集中できない。
俊一はマンガを脇に置くと、珠奈にずしっと覆い被さった。

「何だ、かまってほしいのか。ん?」

すると、珠奈は嬉しそうに、俊一の頬をぺちぺちと叩いた。
それに対抗して、俊一は珠奈の頬を指でぷいぷいと押した。
そうすると、珠奈はくすぐったそうに身を捩った。
ここ数日で、珠奈もだんだん笑顔を見せるようになってきたし、子どもっぽさも見せてくれるようになった。
俊一はそれが嬉しかった。
一方、瑞音はヌイグルミを抱いて、ジ〜っとしていた。
借りてきた猫のよう、とはこんな様子を指すのだろう。

「瑞音、おいで」

俊一が呼ぶと、瑞音はヌイグルミを抱いたまま、オズオズと近づいてきた。
瑞音が手の届く所まで来ると、俊一は瑞音を抱き寄せ、膝の上に乗せた。
瑞音は驚いたように、目をパチクリとさせた。
それでも、やがて頭を俊一の胸に凭れさせて、スリスリと頬ずりした。
まるで、本当の猫のようだった。
珠奈は珠奈で、反対の膝の上でゴソゴソと俊一にジャレついた。
三人でそうやって遊んでいると、

ピンポーンッ

とチャイムが鳴った。
そして、返事も待たずに扉が開いた。

「よう、俊一。きた、ぞ……」

勢いよく入ってきた隆之が、三人を見て固まった。

「ちょっと隆之。なに入り口で止まっ、て……え?」

隆之の脇から中を覗いた梨花も、同じ様に固まった。
そして、

「「犯罪者っ!」」

二人は、俊一にビシッと指差して、同時に叫んだ。

「言うと思ったよ」

普段ケンカばかりのくせに、変なところで息の合う二人だ。
俊一は溜め息を漏らした。
尤も、そんなところがあるから、二人のことはお似合いだと思っているのだが……。

「俊一っ。いくら彼女がいないからって、それはヤべーよ。つーか、お前なら直ぐにだってできるよ。お前けっこう人気あるんだから」
「そうよ。私もけっこう聞かれるんだから、俊一君のこと。隆之なんかよりよっぽどモテるわよ」
「そうそう、ってどうゆう意味だ?」
「そのままの意味よ。あんたの場合、あれのどこがいいの、とか言われるのよ」
「なんだと〜っ!」
「お前ら、もう帰れ……」

直ぐにいつもようにケンカになる二人に、再び溜め息が出た。

「っと、まぁ、冗談はこれくらいにして、ホントにどうしたの、その子達? このアパートの子?」
「いや、従兄妹なんだ。で、今一緒に住んでるんだ」
「へぇ、従兄妹で一緒に……」

「「はぁ?」」

二人はキレイにハモった。

「あ〜、うん。まぁ、驚くと思った……」
「「性犯罪者っ」」

さっきと同じ様に、二人は叫ぶ。
やっぱり仲の良い二人である。

「子どもの前で変なこと言うな」
「え、いや、だって……」
「まぁ、言いたいことは分かるよ」

俊一は、二人を膝から下ろすと立ち上がった。

「公園行こう。帽子とっておいで」
「はい、お兄さまっ」

隆之と梨花は、不思議そうに顔を見合わせた。
そして、

「そういったご趣味ですか、お兄さま」

俊一の耳元でそう囁いた隆之が、俊一と梨花に肘を入れられた。

 

 

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