傷だらけの天使達
プロローグsideA
二人が喧嘩する姿を、私はただ眺めていました。
泣きそうになるのを、必死に堪えて。
私が泣いても、新たな喧嘩の火種が生まれるだけだから。
私が大人しくしていれば、そのうちに、きっと治まる。
そう思っていました。
この光景は、いつものこと事なのですから。
けれど、この日は違っていました。
喧嘩は治まるどころか、勢いを増していきます。
コップやお皿が飛びかいました。
それらが割れる音に、私は身を竦めました。
そして、そのまま二人は出て行ってしまいました。
部屋は静かになりました。
部屋には、二人が投げ合った物が散乱しています。
部屋には……、二人の姿はありません。
私は、弾かれるように立ち上がり、窓を開けました。
そこには、まだ二人の姿がありました。
私は叫びました。
二人を引きとめようと、必死になって叫びました。
私の目から、堪えていた涙が溢れました。
それでも私は叫びました。
二人は振り返り、一瞬だけ、お互いに目を合わせました。
そして、二人は別々の方向へ歩き出しました。
二人の姿は、闇と涙に紛れて、消えてしまいました。