帰り道


放課後・・・というよりもう夜だった。委員会の残業のため7時を回ってしまったのだった。
「ま〜だ〜。」
駐輪場で自分のチャリ鍵を探す。いつものことだが毎回鍵探しで時間を取られてしまうのだ。待たせているから余計焦る。
「毎回毎回飽きないねぇ・・・。」
ため息を吐いたのは美里(みり)。同クラス、同委員会であり、昔からのいわゆる幼なじみの女の子であった。
「仕方ないだろ、癖なんだから。」
がさごそと鞄の中を探す・・・が、ない。
「ズボンのポケットは探した〜?」
言われてみればと思い確認すると・・・あった。
美里よ、流石だ、ナイスプレー。
見つけた鍵を自転車に刺し、またがった。
「う〜、寒いよ〜。」
美里はまるで南極で凍えるような仕草をする。
確かに今夜は寒かった。ここ数日春らしくない暑い日々が続いていたため、体が寒さに対して順応していないのは確かだった。
「・・・?どうかしたの、翔(かける)?」
「ああ、『抱いて暖めてやろうか?』って言おうとしたけど犯罪っぽいからやめただけ。」
「それじゃあセクハラだよ。」
俺の冗談にけらけら笑う美里。どんなボケでも変わらぬ態度が凄い。
2人は自転車を走らせた。

「今日もまた告られた〜。」
面倒くさそーに美里が言う。
悔しいけど美里は男にもてた。外見もそれなりに良いし、性格も明るく人気者。
残念ながら・・・俺も美里のことが好きな男の中の1人だ。
「またか・・・そんな言葉を言ってみてえよ。」
俺は苦笑いをする。
俺はもてなかった。平均以上なのは身長くらいなもんだ。顔は鏡を見る度に嫌気がさす。勉強もそれほど得意ってワケじゃない。
「いやだよ・・・だってふんなきゃいけないもん。」
悪びれなく言う美里、それは当たり前のことだった。
「屋久(やく)だっけか。」
「うん、そうだよ。」
美里は同じクラスの「屋久」って奴に片思い中だった。
「屋久くん、かっこいいもん。」
笑いながら言う美里、本当にかわいい。
だけれどもその笑顔は自分に向けられたものではないのだ、悲しいことに。
「はあ、俺も何か1つでも取り柄があればなあ・・・。」
俺の本音をぼそっと言った。

俺には自信など全くない。どこをとっても平々凡々、出来ないものもなければ得意なものもない。
そんな俺は自分が嫌いだった。

「好きだ、付き合ってくれ。」
俺は唐突に言った。自転車で併走する2人にほんの数秒沈黙が走る。
「・・・って告白されたのか?」
そのほんの少しの沈黙に耐えきれず、本気の告白を冗談に変える。
「ちがうよぉ。」
「それとも、『ぼ・・・ぼぼぼ僕、あっあなたが好きですぅ』とか言われたのか。」
「そんな人居ないよぉ。」
再び美里はけらけら笑う。
そんな美里の姿を見ながら、自己嫌悪に陥る。
結局俺は「道化」でしかないって事だ。

2人の自転車はスローペースで走り続ける。
「前の告白は靴箱の中に手紙が入ってた。」
「へえ。」
「しかも『茶封筒』で。」
俺も、言った本人の美里も笑う。
「そいつはすげえな、むしろ俺が惚れる。」
「ほかにはねえ・・・。」
そんな少し話が続き、美里は言った。
「でも断んなきゃいけないんだもん・・・いやだよぉ、断るの。」
苦笑いで言う美里。
「たしかになあ・・・。」
「告白って・・・勇気いるよね・・・。」
美里が言った。
「ああ、だろうな。」
2人の間にしばし沈黙。
俺は美里のことを、そして美里は屋久のことを考えているのだろう。
もう美里の家の前であった。
「もう家だね。ありがと。」
美里は軽く言った。
俺は何故かじゃあなとも言わず道を曲がる。

俺は自身の悔いを払うかのように思いっきりペダルを踏み、家へ帰った。


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