『ToB』資料館◆近代・現代
聖者エルシスが失踪したしばらく後、各地の有力者や資産家を中心としたある団体が発足した。
秘密結社『栄光の暁』団である。
この団体は、錬金術の活用により、かつてのごとき繁栄を世に(…すくなくとも、自分のもとに)取り戻そうという目的のもと、現在も秘密裏に活動している。
錬金術のさいには、術を発動、もしくは術の効果や威力をコントロールするために魔法陣が用いられることが多い(いわゆる“錬成陣”)。
これの一部にシードを配置すると、シードのもつ『エレメントのチカラを操る』チカラにより、エレメントのチカラを増幅したり、エレメントのチカラそのものを錬成することさえ可能になるのだ。
かつて豊富なエレメントのパワーを使って地上で行われていた、様々な魔法や技術が復活する。それはもちろん、チカラと富をもたらす。
みずからの持ち分を増やすためにと、多くの富める者がその研究に投資し、力あるものがそれをふるった。
錬金術は現代においてはひどく金がかかるシロモノである。
――錬金術はエレメントのチカラに依存する術体系であるため、それが枯渇してゆくほど、発動の条件がどんどん高くなる。具体的には、錬成陣はより複雑精緻に、媒体と術者もより質と量とを求められる。さらなる研究と人材育成が必要になり、それには情熱と幸運のほかにどうしても金が必要となるので――
その金額は莫大(小規模な国家予算並み)なもので、“マトモなアタマをもつ”ものは今はもう、それに見向きもしないということに表向き、なっている。
もちろん『エレメント錬成術』に不可欠なシードも媒体の一つとして必要であるが、これは他の者たちにも需要があり、簡単に集められるものではない。
『栄光の暁』はそれらの需要を、きわめて古典的な方法で満たした。
調達しきれぬ金は奪い、もしくは流用した。
買い取りきれぬシードは、荒事屋に奪わせた。
それゆえに、この団体はその存在と活動を秘密にせざるをえなかったのである。
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表では神殿の活動、裏では『栄光の暁』団の暗躍により、シードの希少度はたちまちのうちに跳ね上がった。
すると、徒党を組み、シードを強奪するものたちが現れた。
あるいは、高額で売り渡すため。あるいは、自分が使うため。
シード=祭るべき魂を奪われることは、神殿にとって看過し得ないことであった。
そして、その手段は社会的にも容認しがたいものである。
シード強盗犯には、神殿(と被害者団体など)により、賞金が懸けられるようになる。
するとその賞金を目的に、もしくはさらに社会正義のため、シード強盗犯を追いかける者たちも多くあらわれるようになった。
彼らはシード強盗ハンターと呼ばれる。
大抵が冒険者との兼業だが、腕利きのハンターのなかにはそれ一本で生計を立てている者もいるようである。
もちろん私情や被害回復など、賞金とは関わりなしに、ハンター活動をしているものも見受けられる。
なおシード強盗たちのなかには、きわめて小数だがシードを私しない物もいる。
正体を隠してこっそりと神殿を訪れ、事情を知らせず献納してゆく(ときには夜中のうちに玄関口においていく)のである。
神殿では万一、もちこまれたシードが奪われたものと判明した際には、容疑者を手配し、被害者にシードを返却した上で、神殿への献納をしてくれるようにと依頼することにしている。
その誠意ある対応にもかかわらず、一部では強盗団と神殿とのつながりを疑う者もいる。しかし、慈善団体、福祉団体としての神殿の人気をはばかり、それを公然と口にするものはまれである。
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